The 10th Anniversary Special Contents

十周年おめでとうございます。

国本武春/
浪曲師・日本浪曲協会副会長

2015.08.31 UP

このインタビューコーナーでは前回(7月更新)、前々回(6月更新)と逗子にお住まいでホールと深い関わりを持っていらっしゃる方々のお話を紹介してきました。今回は、千葉県出身・在住でいらっしゃいますが、逗子文化プラザホールが開館した2005年とその翌年もなぎさホール舞台に登場いただき、先の6月27日にはホール開館10周年記念事業のひとつとして開催した独演会でも客席を大いに沸かせてくださった人気浪曲師の国本武春さんにお話を伺いました。

節目にご来館いただき、ありがとうございます。

国本氏:このたびは開館記念ということで、おめでとうございます。今回も素晴らしいお客様に恵まれて、本当に喜んでいただけたみたいで。“掛け声”なんかは、逗子の皆さんは特に筋が良くて、他ではなかなかこうはならないような不思議な一体感でしたね。逗子の方は…仕事じゃなければね、この近くも何回か来ていると思うんですが…でも、こうしてまたお招きいただいて、3回目なんですね。私自身、良い感じで楽しく公演できましたし、浪曲がどうのというのではなく、やっぱり日本独特のものを、その時集まった方々と、よく知っていようとなかろうと、楽しくやってその場が盛り上がるのが一番ですね。

国本さんのこの10年は。

国本氏:ちょうど10年前は文化庁の文化交流使として1年間アメリカに行って帰ってきた頃ですね。三味線入りブルーグラスバンドをやって、アルバムを出したり、ツアーをやったり。それから色々なことをやるようになって、テレビ、ラジオ、公演、ツアーなど随分と、わけがわからないくらい忙しくしていて。子ども向け番組での三味線弾き語りもちょうど10年くらいになりますね。私がアメリカから帰国して次に推薦した文化交流使の方は今同じ番組に出演している講談師の神田山陽さんです。忙しい中で多少無理をしても自分は大丈夫、と思っていたら震災の前の年の年末に病気をしてしまいまして、公演中に倒れて意識不明になって、長い闘病生活だったんですが、そこから奇跡的に復帰することができ、今に至っています。 (ブルーグラス:欧州からの移民の時代、米国アパラチア地方に入植したスコットランド、アイルランドの人々の伝承音楽をベースとするアコースティック音楽)

浪曲について。

国本氏:浪曲はもちろん残していかなきゃいけないんですけども、他の古典芸能と違って、色んな変わった人がどんどん出て、いわば手を替え品を替えでやってきた芸です。ですから「これが浪曲」というカッチリとしたスタイルがあって、その伝統を守っていくっていうんじゃなくて、例えば浪曲師出身の三波春夫さん、村田英雄さんという先輩たちであれば、その時代だったら歌謡曲が入ったり、どんどん形を変えながらやっていく話芸なんです。ただ、浪曲があまりに流行って拡がっていった中で、古典のスタイルをできる人がいないってのも困ってしまう。伝統的な古い節が評価できなくなる一方では、伝統の上に何か新たに築くことができなくなる。そういう意味で私も今のような古典と新しいものの両方で活動をしています。現代はさらにお客様にどうやって聞かせるかとか、演者側の工夫は一層求められているようにも思います。流行っているときは声さえよければとか、いわゆる人気ネタをやればよかったのかもしれませんが、今はどうやったら一度聞いてくださった方がリピートしてくださるかとかも考えることが必要になってきています。昔は生活の中に、鼻歌のように浪曲が出てきていたので、そんな必要はなかったのかもしれません。私はこれから長くかかっても、現代生活の中にまた浪曲のフレーズがでてくるといいなと思っています。そのために、例えば先入観のない子どもたちには習慣的に三味線の音や唸り声を聞いてもらいたい。また浪曲を知っている年配の世代と子どもたちの間の世代にも、まだまだ日本独自のもので奇天烈な面白いものがいっぱいあるんだってことを知ってほしいなと思います。それは、さっきの話のように、浪曲を残そうとかいうことが先立つのではなくて、まずはふざけて、楽しくやっていけるようにしたいですね。やっぱり何でも楽しくなくなっちゃったらできないので。今回の逗子でも、おかげさまで、今回のお客様とだけの空気を共有して、それでお楽しみいただけたのであれば嬉しい限りです。 改めて、十周年おめでとうございます。

(聞き手:逗子文化プラザホール)

国本武春

国本武春

国本武春

父は天中軒龍月、母は国本晴美、両親共に浪曲師。19歳で名曲師(浪曲伴奏者)東家みさ子に浪曲三味線を師事、20歳で東家幸楽に入門、浪曲師となる。上野本牧亭での初舞台を皮切りに、寺山修司の演劇に参加するなど数々のライブに出演。歌手、三味線奏者、ストーリーテラーとしても活動。古典浪曲、弾き語りライブ、観客養成講座、日米でのブルーグラス・ミュージック公演、三味線ワークショップ、テレビ、ラジオ出演と多方面で活動中。浪曲中興の祖、桃中軒雲右衛門から続く「忠臣蔵」は国本武春のライフワーク。

国本武春 公式サイト
http://takeharudo.music.coocan.jp/

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