イベントレポート 「LEO箏リサイタル2023 -GRID//OFF-」2023年7月8日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 素晴らしい才能に出会った。箏奏者LEO(=今野玲央)、1998年生まれ。表現の巧みさ、卓越したテクニック、スピード、強弱、何より箏だけでこれほど異なる音色が出せるのかと不思議ですらあった。どの曲にも独自の解釈があり、それがアレンジを通して伝わってくる。
 古典をモダンなアレンジで弾いても、日本の伝統的な美しさが感じられた。《春の海》(宮城道雄)は昔からお正月などでよく演奏される曲。ヴァイオリン(林周雅氏)の悲しげな旋律がしっとりとしたり、激しくなったり。そこへ箏が華のある音色で合わせ、聞き応えのある演奏に仕上がっていた。《鳥のように》(沢井忠夫)は、美しい強弱の中で流れるように音があふれ出す。繊細さ、激しさ、甘さ、悲しさが縦横無尽に現れては消えた。《Andata》(坂本龍一)。LEO氏が尊敬する坂本氏の壮大な曲を極限まで削ぎ落としてアレンジを施したという。アカデミックかつロマンティックなメロディを丁寧に再現していた。もっと聞いていたいと思わせるほど心地良い時が流れた。《松風》(今野玲央)は、箏が時々、ピアノの音のように聞こえた。激しく響いているのに、ピュアで輝くように美しい。《Deep Blue》(今野玲央)では、箏とピアノ(ロー磨秀氏)が互いにリードし支え合った。謎めいていて神秘的なLEO氏のオリジナル曲。もし青い海に深く沈んで自由に泳いでいたら、こんな気持ちになるのだろうか...なんて想像の世界に浸ってしまった。ピアノの音色がそんな夢のような想いを一層引き立てた。《Libertango》(A.ピアソラ)。冴えわたるLEO氏のテクニック。箏でこれだけの情熱が表現できるのかと感心した。箏とヴァイオリンが主旋律を交互に弾き合い、ピアノがそれを力強く盛り上げる。3つの楽器が互いを生かし合った見事な演奏だった。アンコールは《月の光》(C.ドビュッシー)。淡い月の光を思わせる箏、ピアノ、ヴァイオリンの静かな演奏で本公演は美しく幕を閉じた。
 類いまれな才能だと感じた。演奏だけでなく、聴衆を空想の世界へと掻き立てるようなオリジナル曲でも力を発揮していた。箏の可能性を大いに感じさせてくれたLEO氏。今後の活躍に期待したい。

ボランティアライター 青栁有美

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 今日は、前から楽しみにしていた箏奏者LEO氏によるピアノとヴァイオリンとのコラボレーション公演だ。ロー磨秀氏と林周雅氏の仲良しコンビが、ピアノとヴァイオリンで支える。観客は子どもからお年寄りまで幅広い年齢層だ。
 ”春の海”は、ヴァイオリンと箏によるデュオ。この曲は尺八と箏の組合せが多いそうだが、ヴァイオリンと箏の掛け合いがテンポ良く、冬の名残でちょっと荒れた感じの春の海の様子が頭に浮かぶ。
 坂本龍一作曲の“Andata”は箏のソロで、題名の持つ意味からしても坂本龍一氏への追悼の気持ちが込められていて寂しげな曲想だ。一つの楽器で、陽と陰の両方とも表現できるところが箏という楽器の妙味だ。
 その後のLEO氏オリジナル曲の“松風”は対照的にとてもテンポが良く、海辺で風が松の防風林に当たる様子が想像でき、箏によるソロが打って付けの曲だ。
 コンサートの副題である「GRID//OFF」とは、既成の概念に捉われない枠の外という意味合いだが、ここまで音楽も多様でかつ進化してくると、「GRID//OFF」という副題をすでに超えているのではないだろうか。
 後半の最初は、”Deep Blue”。ピアノの音か箏の音か聞き分けられないところがあった。両者の音色が同化していた。迫力があって後半では1番のお気に入り。もう一度聴いてみたくなった。
 コンサートのトリは、T.ハマシアン作の“Nairian Odyssey”、初めて聴く曲だ。何とも神秘的な曲で、箏に限らず和楽器とヴァイオリンの組み合わせが良く似合いそうだ。
 アンコールは、C.ドビュッシーの“月の光”。これまでは、冨田勲氏のシンセサイザーによる演奏を聴く事がほとんどだったが、和の楽器である箏の音色も曲に良く溶け込んでいて心地良い。
 このような複数の楽器によるコラボ企画は大歓迎。次回は、箏、ヴァイオリン、尺八のコラボレーションを期待したいところだ。

ボランティアライター 福岡伸行

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