イベントレポート 「青島広志 おしゃべりコンサート」2023年9月10日(日)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 不覚にも青島広志という音楽家を知らないまま、おそらく学校の先生のような人がクラシック音楽への誘いのような解説と曲紹介をする初心者向けの会だろうと思いながらなぎさホールへ赴いた。予想していたとおり、会場年齢はいつもよりかなり高めといった印象。舞台の上には白板とピアノと椅子が二脚。ますます授業めいた感じがする。
 と、何の気配もなく舞台に出てきた青島氏、突然華麗なタッチでトッカータを弾き始め、拍手も待たない早口でオペラの歴史について語りだす。ここまでは予想通りだが、違ったのはそこから。話に沿った作曲家の曲をテノールの小野氏、ソプラノの横山氏が披露していくのだが、この歌唱が圧倒的に素晴らしい!小野氏のヘンデル、横山氏のモーツァルトと続くが、たった三人きりの、何の装飾もない舞台が二人の声が響きだすと一気に華やかな舞台装置が目に見えるようなオペラのシーンに早変わりして見える。横山氏の「今の歌声は」ですでにその見事なコロラトゥーラソプラノに酔いしれる会場に、「還暦過ぎてもこの技術を保っている人は珍しく素晴らしい」という青島氏の大暴露でますます驚愕。
 続く「椿姫」の「乾杯の歌」で乗りに乗って来た歌い手二人に青島さんの的確で自在、響き渡る素晴らしいピアノがオーケストラ不在を感じさせない豪華さを演出、そして横山氏の「ああ、それはあの人だったのか~花から花へ」は、もう鳥肌が立つほどの圧巻の舞台だった。ああ、もったいない、これは声楽好きが殺到してみるべきコンサートだ!と心の中で叫び、涙が出そうになった。その興奮を納める如くカヴァレリア・ルスティカーナの「間奏曲」が流れ出し、一層感極まって耳を傾ける。そして「トゥーランドット」では、会場を揺るがすような三人の演奏で目の前に豪華なオペラの舞台を見ているような錯覚を覚えた。
 こんなコンサートは、見たことがない。おしゃべりをしながらピアニストとしても秀逸な青島氏が歌い手を躍らせ、たった三人きりで劇場そのもののような大スケールの音楽世界を繰り出してくれる。
 後半の日本歌曲もどれも素晴らしく、小野氏の「鉾をおさめて」など、ぜひどんどん演奏してほしいと思った。子どもの歌では大人がみんな大喜びで立ち上がって歌っていた。
 文化プラザホール、よく、こんな素晴らしい人たちを連れてきてくれました!出会いに感謝、次回は、声楽好きの母を連れていきます。

ボランティアライター 不破理江

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