イベントレポート 「細川千尋 ピアノ・トリオ JAZZ LIVE」2023年12月3日(日)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 チラシの華奢なうら若き美人ジャズピアニストの写真を見て、満員の会場を予想していたが、客席にはまだ余裕があった。昼間からジャズというのがあまり気乗りがしないのか。けれどおかげで今まで見たこともない間近でステージを見せてもらえることに。
 ドラム、コントラバスに続いて登場した細川氏は、意表をついてひざ下たけのローズピンクのスカート姿、金色の素敵なハイヒールを煌かせる。そのかかとで床を打ち全身をうねらせるようにリズムをとりながら演奏する1曲目は“シーズンズ・オブ・ラブ”。軽やかで美しく、温かな気持ちが満ちてくる演奏。ただ、少し音が硬い?ような気がした。
 3曲目が終わって「実は10月に出産、今日は復帰の初舞台。緊張しています。別な人になったような気持ちで立っている。」というお話を披露。母になったことで得られた力と喜びがあふれる感じだ。そして始まった“サン・アンド・ムーン”。のっけから原生林の中を通って湧き出てきた水のしずくが静かに滴るようなイントロのピアノに心打たれる。その静謐な感動が途中から打って変わってベース、ドラムとのフルパワーでの大セッションに展開。ピアノとドラムの掛け合いでは、ピアノは打楽器だったと気づかされる。ベースが弾き、ドラムとピアノが叩き、すさまじいパワーがほとばしる。ここで最高潮で終わり、と思いきや、トリオは再びピアノの静かな世界に戻って演奏を終える。すごい!このあたりから細川氏、ほぐれてきた感じが強くなってきて、休憩をはさんだ二部では本領発揮という感じ。ミュージカルの名曲を集めたアルバムを中心に展開したツアー最後のコンサートだという今回、誰もが知る名曲が続く。
 そして大きな感銘を受けたという舞台「オペラ座の怪人」からのピアノソロはまさに渾身の一曲。会場は水を打ったように静まり返って聴き入った。そして1時間で書き上げたという自作の“再生-REBORN-”は、もう圧巻。彼女の感性のすべてが自由奔放にほとばしり、飛び跳ね、叩き、そして音を優しく抱きしめ、ピアノが自在に踊る。ドラムがいいぞいいぞといわんばかりに顔を見て呼応し、セッションを盛り上げる。トリオの音が一体となって観客席を熱狂させた。アンコールにクリスマスソングを入れるサービス精神。『細川千尋 ピアノ・トリオ』の皆さん、本当に素敵な時間をありがとう!

ボランティアライター 不破理江

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師走に入り巷は慌しい日曜日、逗子文化プラザなぎさホールに向かった。前から楽しみにしていた、ジャズピアニスト細川千尋氏のJAZZ LIVEだ。ベースは小山尚希氏、ドラムがセバスティアン・カプテイン氏。二人とも細川氏と協演してきた間柄。
 会場内は、年配の方が多いようだ。きっと若い人たちは、クリスマスの準備に出かけてしまったのだろうか?こんな素晴らしい演奏を聴かずにもったいない!
 初めの曲は、「レント」の“シーズンズ・オブ・ラヴ”。ホッとする曲ですんなりとコンサートに溶け込めた。“悲しみのクラウン”は、きらきらしたピアノで始まるが曲全体としてはちょっと寂しげで哀愁を感じさせる。ぬるめのお風呂に浸かっているような気分で副交感神経の働きが活発になった気分。“チム・チム・チェリー”は、とにかく楽しい。「ミス・サイゴン」の“サン・アンド・ムーン”は、すごく力のこもった演奏でもう一度聴きたい曲の一つ!そして前半の最後は、”アナザー・デイ・オブ・サン”。ベースが主役だ。ベースの小山氏、ブラボー!
 後半の始まりは、「キャッツ」の“メモリー”。「キャッツ」は何十年も前に自分が生まれて初めて鑑賞したミュージカルだけに思い入れは深い。いつまで聴いていても飽きることは無い。自分でもピアノで弾けたらいいのになあと思う。
 “ミリオン・ドリームズ”は長い曲だが、ジャズらしいアレンジが際立っている素晴らしく楽しい曲。”夢やぶれて”は、とても優しいメロディでうっとりする。「コーラスライン」の“ワン”は、ドラムとベースから始まる。お馴染みの曲だが、いつ聴いてもテンポが良くて楽しい曲。
 「オペラ座の怪人」から“ミュージック・オブ・ザ・ナイト”。聴きごたえがあって、ミュージカルを観ている感覚になる。そもそも、細川氏が昨今ミュージカル曲をコンサートで取り上げる事になったのは、2019年にロンドンの劇場で「オペラ座の怪人」を鑑賞したのがきっかけだそうだ。総合芸術としてのミュージカルには、メッセージ性が強く感じられて”開眼”したとの事。なるほど、合点。私もそう思う!
 プログラム最後の曲は、細川氏自作の”再生-REBORN-”。この曲の最後には、2014年に初めて出したCDに入っている“Thanks!”の一部が入っている。それだけ細川氏にとって思い入れのある曲だという。
 ああ楽しかった。今日は、ミュージカルを堪能した。どの曲ももう一度聴きたい曲ばかりで、全ての曲が入ったCDを買ってしまった。サイン会で、また逗子でコンサートを開いてくれるように細川さんにお願いしておいた!

ボランティアライター 福岡伸行

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