イベントレポート 「若手演奏家シリーズ#12 SHŪREI-秀麗なる木管五重奏の音色-」2023年2月5日(日)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 2023年3月に約100年の歴史に幕を閉じる神奈川県立逗子高等学校吹奏楽部の卒業生を中心に結成された木管五重奏“SHŪREI”。かつて逗子高校の部活の華だった吹奏楽部は練習にも熱心で、放課後、校舎のあちらこちらから楽器の音が響いていた。今回の出演者のように音大に進学し、演奏活動を続けている卒業生もいれば、音楽を生涯の友とした者もいるだろう。若き日の情熱がその季節を過ぎても傍らに寄り添い続ける。その代表ともいえる“SHŪREI”から、今日は木管五重奏(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン)の魅力とは何かを感じたい。
 《セレナード第13番ト長調「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」K.525》(W.A.モーツァルト)は、明るいメロディに軽快なテンポ。立春を迎えて、桜を待ちわびる気持ちが沸き立った。《3つの小品》(J.イベール)の第3楽章は、輝く音色が次々と繰り出され、柔らかく流れるような音運びが心地良かった。《森のメリーゴーランド》(高橋宏樹)は自然に囲まれた逗子高校にちなんで選ばれた曲。様々な旋律が現れては消え、メリーゴーランドに乗っていろいろな景色を見ているような感覚だった。ノスタルジックな気分に浸ったのは、《ジブリメドレー》。「魔女の宅急便《海の見える街》」「千と千尋の神隠し《あの夏へ》」「ハウルの動く城《人生のメリーゴーランド》」「となりのトトロ《風のとおり道》」「千と千尋の神隠し《ふたたび》」。今も絶大な人気を誇る作品から懐かしい曲の数々をたおやかに演奏してくれた。《サウンド・オブ・ミュージックメドレー》(R.ロジャース)は自分たちの演奏だけを聞いて!というような出過ぎた感じがなく、映画の1シーン、1シーンを鮮やかに蘇らせた。ヒロインを演じたジュリー・アンドリュースの明るい笑顔と美しい歌声、かわいい子どもたち、高い山々、広い大地が目に浮かんだ。
 アンコールは《銀河鉄道999》(映画版)。ワクワクするような演奏を聞いてふっと思った。逗子高等学校は完校し、逗葉高等学校と再編統合して4月から逗子葉山高等学校に生まれ変わる。でもこれで終わりではない。校舎や名称はなくなっても、吹奏楽部の部員たちは、この先も音楽と共に生きていくに違いない。その他の卒業生たちも高校生活で得た何かを糧に進んでいくだろう。
 先に書いた木管五重奏の魅力とは、“極上の癒やし”-そう感じた。

ボランティアライター 青栁有美

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 まだまだ寒さが厳しいが、暦が春を告げた翌日。私の楽しみとしてハマってしまったもの。逗子文化プラザホールがプロデュースした「若手演奏家シリーズ」の鑑賞のため、さざなみホールに向かう。
 今日は、シリーズ第12弾の木管五重奏だ。演奏するのは昨年創立100年目を迎えた県立逗子高校を卒業して演奏活動を続けるメンバーを中心に結成した木管五重奏“SHŪREI”だ。グループ名は同校の校歌「ああ、秀麗の自然境」からとったのだろうか(同校は2023年に県立逗葉高校と再編・統合する)。
 各奏者は、フルート臼井源太さん、オーボエ下山音留波さん、クラリネット鈴木志織さん、ファゴット田邊彩乃さん、ホルン疋田遥香さん。
 私の大好きな、モーツァルト:セレナード第13番 ト長調『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』K.525から始まる。木管五重奏と相性が美しい、ハイドンの『ディヴェルティメント 変ロ長調』、イベールの『3つの小品』と続く。演奏で、心と体が温かくなる。個性あふれる楽器の重なりあう音が春の陽射を伝えてくるようだ。思わずほっこりとする。
 休憩を挟んで、奏者たちは逗子高校吹奏楽部のユニフォームである緑色のブレザーに着替えてステージに現れた。
 プログラム後半は、やさしく誰でも一度は耳にしたことがある選曲。中村八大『上を向いて歩こう』、続けて、自然に囲まれ今年3月末に閉校になる逗子高校への思いだろうか、自然をテーマに演奏する。高橋宏樹『森のメリーゴーランド』や映像が目に浮かぶ『ジブリメドレー』。最後は原作映画のオーストリア高原を彷彿させる『サウンド・オブ・ミュージック』のメドレーだ。
 アンコールは逗子高校吹奏楽部が定番で演奏したという『銀河鉄道999』。このプログラムで若い演奏家たちだが紡ぎだす音楽は、世界の著名な音楽家に負けていない。スピリチュアルではないが、「若い力の波動」が演奏に乗り移り、ベテランでは出せない瑞々しい演奏に聴こえる。
 彼らは次代を担うとする演奏家になるだろう、いや今を輝いている。今しか鑑賞できない貴重なサウンドアートだろう。
 これから何年たっても、いつまでも逗子や母校を忘れないで、演奏しに来て欲しいものだ。

ボランティアライター 海原弘之

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