イベントレポート 「HANDSIGN 手話パフォーマンスLIVE」2022年10月2日(日)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 ヘレン・ケラー『奇跡の人』の昔から、障がいを持った人を題材にしたドラマはあった。サリヴァン先生はヘレンから甘えを排除し、自分一人で生きる術を、時にスパルタともいえる教育で叩きこんだ。今や世界はマイノリティの人たちと共存する時代。そんな時代に、HANDSIGN…2人組の男性の歌う歌は、弱い立場の人たちにやさしく寄り添い、エールを贈る。会場には手話でコミュニケーションをとるリピーターも多く見られた。
 コンサートはアナウンスではなく照明の明滅が開始の合図だ。メンバーのSHINGOとTATSU、そしてHANDSIGNの紹介が映像で流される。ボーカルと手話パフォーマーという新しい表現方法のアーチストとして、ニューヨークの「アマチュアナイト」で優勝を重ねた、と。
 2人は、バックに女性2人のダンサーを従えて登場し、軽やかにヒップホップダンスを踊る。街の気のいいあんちゃん風だが、どこかナイーブさも漂う。続けて瑛人《香水》、ハジ→《for You。》、三木道三《Lifetime Respect》といった別アーチストのヒット曲を交互に歌う。2人とも素直な甘い声で、定番の結婚式ソングに見事にはまる。マイクを持たない相方は、ダンスに手話を乗せて観客に発信する。それが彼らのスタイルだ。手話を歌の振り付けに使うのは、日本人にはごく普通に受けとめられると思う。日本の歌手は、歌詞を伝える手段として声に振り付けを併せる、とは言い過ぎだろうか。日本人歌手と歌と手話の融和性がそこにある、と私は感じた。
 中盤からは、彼らのオリジナル曲が続いた。実話を基にしたMVシリーズは、中盤に《人生が変わる音》、ラストに《どうやって想い伝えようか》がスクリーンに流れた。どちらもショートムービーである。登場人物は、トランスジェンダー、ガン罹患者(メンバーのSHINGOの高校時代だ)、事故による障がい者、そして、ろうあ者。彼らが感じる絶望、壁を、声高に叫んだり、訴えたりしない。周りが理解して、助け合い、愛し合う世界である。そして音楽的にもバラード、ラブソングとして完成度は高い。老若男女、健常・障がいを問わず、心に沁みるであろう。MVのYouTubeが1,000万回再生を突破し、映画化された《僕が君の耳になる》は、1回聴いたら、サビが頭に残る名曲である。
 HANDSIGNは、音のない世界に住む人たちにも、音楽を届けようとしている。私には実感できないが、リピーターの方たちが手話で参加しているのを見ていると、成功しているのだと思えた。

ボランティアライター 三浦俊哉

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