イベントレポート 「逗子落語会 林家たい平・桃月庵白酒 二人会」」2022年9月11日(日)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 9月になったというのに、いまだに酷暑の夏を引きずって蒸し暑い。コロナのもやもやを吹き飛ばす為、笑いを求めてなぎさホールに向かう。林家たい平・桃月庵白酒 二人会だ。なぎさホールは8割方席が埋まっている。年配者が多い。演目は4つ。落語が3つ、色物1つの構成。
 落語は天下泰平の江戸時代に発展した芸能だから、笑いを誘うひょうきんものが主人公であることが多い。“道具や”の主人公の与太郎もその典型だ。桂枝平さんはテンポ良く歯切れがいい。間抜けな与太郎の顔が浮かんできてどうしても笑ってしまう。天下泰平の江戸時代、町中の道具屋の軒先でのなんの変哲もない客との会話、その場の雰囲気が良く伝わってくる。
 桃月庵白酒師匠の“佐々木政談”も面白い。噺としては、南町奉行の佐々木信濃守が江戸の街中で、お奉行ごっこをしている子供たちを見たのがきっかけで、信濃守が直々にその子供と親を呼び寄せて話をするシーン。会話のやりとりがユーモアたっぷりに描かれていて面白い。お役人と子供とのやりとりだ。決して南町奉行が上から目線の態度を取らずにフランクな会話になっているところが面白い。実際に当時の奉行がそのように民主的存在であったかどうかは知る由もないが、少なくとも作者がそう表現したという事はその点まんざら作り話とは言い切れまい。
 落語の鑑賞は数える程しか経験はないが、年齢と共に関心が増してきた。それは、江戸時代が自分の身の程をわきまえて生活している限り、結構楽しい生活を送れたのではと思うからだ。江戸時代の庶民の生活にある種の憧れを持っている。
 色物は、林家たい平師匠の一番弟子である林家あずみさんによる“三味線漫談”。三つの落語の間に挟まって、笑いのメニューとしてバランスが良い感じ。落語と違いストーリーを見失わないように緊張する必要がないので、このような漫談も肩の力が抜けて楽しい。
 今日の寄席のトリは、林家たい平師匠の“青菜”。隠居夫婦の粋な洒落言葉に感心した植木屋夫婦がその真似をして、大工の半公に対して隠居夫婦と同じ言い回しで粋な扱いを試みるが行き当たりばったりのセリフ回しでトンチンカンな結末に!この会話のやりとりの妙味を引き出す林家たい平師匠のスピード感溢れる噺は落語の醍醐味だ。
 今日はまわりの人に遠慮せずに思う存分笑えてよかった。4つの演目、どれもテンポが非常に良くて、一瞬の飽きもなく時間が過ぎ去った。
 過去2年半コロナでどれだけ窮屈な思いをしたことか?なぎさホールを埋めた多くの落語ファンの顔にも満足感が漂っていた。

ボランティアライター 福岡伸行

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 大好きな長寿テレビ番組『笑点』。
 2004年12月、林家こん平師匠の代役として「大喜利」に出演した林家たい平師匠。『笑点』が放映される日曜日は必ず見続けた。『笑点』メンバーの中で、林家たい平師匠は若手の旗手として番組に新たな風を投げかけているようだった。
 その林家たい平師匠が逗子で公演をしてくれる。生でみる同氏は、テレビでみるより重厚感があり落語界の若手というより、壮年になったリーダーの風格だ。実際の年齢は57歳だそうだ。今後は名人の世界に入っていくのだろう。
 本公演のトリを務める林家たい平師匠は、前日は熊本公演、当日は東京浅草で一日警察署長を務めたのち逗子に来てくれた。
 本公演で高座に上がるのは、4人。個性豊かな演者たちだが、林家たい平師匠のDNAで形作られているようなハーモニーを感じた。
 番組のスタートは、桂枝平(えだへい)さん(26歳)。幕が開くとテンポのいい口調が心地よい。写真よりカッコイイ、落語界のジャニーズといった趣。演目は落語「道具や」。
 続けて、二人会のもう一人の主役、桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)師匠が高座に上がり、落語「佐々木政談」を披露。
 お仲入り後、華やかな雰囲気の女性が高座に。林家たい平師匠の一番弟子という美人の林家あずみさんが「三味線漫談(しゃみせんまんだん)」で明るく笑わせてくれる。
 トリの林家たい平師匠が高座に上がると、観客の熱量が一段とアップしたようだ。林家たい平師匠は『笑点』の裏話を披露し、「10月から『笑点』のやり方を変えて「座布団」のやり取りをやめる。そうすると山田さんがいなくなるのがいいことです」と。ウソとわかるまで観客はびっくりしていた。
 林家たい平師匠は『笑点』話の前振り後、落語「青菜(あおな)」を演じた。今度、私も家で使ってみようと思った部分が落語の中にあった。
 植木屋さんが、御屋敷での仕事の一休み中に、主人から「青菜」を勧められる。次の間から奥さんが「旦那さま、鞍馬山から牛若丸がでまして、名を九郎判官」とよくわからない返事。主人も「義経にしておきな」と。これは実はシャレで、青菜は食べてしまってないから「菜は食らう=九郎」「それならよしとけ=義経」とお客さまに失礼のないように使う言葉。これに感心した植木屋が自宅に帰りやってみたら、奥さんが「鞍馬山から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官義経」と先を言ってしまったので、植木屋は困って「うーん弁慶にしておけ」とオチをつける。林家たい平師匠の語りに観客のマスク下からはクスクスと笑いが聞こえてきた。
 最後に新型コロナウイルス感染症の状況下、観客の健康を祈って、テレビでよく見かける林家たい平師匠の身体を張った花火の演技で終演した。

ボランティアライター 海原弘之

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