イベントレポート 「親子で楽しむクラシック名曲コンサート 「こどもオペラ 3匹のこぶた」」2022年7月9日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 開演前、ママ、パパに連れて来られた元気のよい子どもたちの姿が、客席やラウンジに広がる。泣き出す子、走り回る子、なかなかじっとしていない。今日は童話「3匹のこぶた」を子ども向けにオペラ化した公演だが、オペラの名曲だけが歌われるのではない。物語が進む中、様々なジャンルの音楽が披露される。オペラ、童謡、アニメ、邦楽、オリジナル曲などアンコールも含め全23曲。
 1番上のふぅちゃん(テノール・宮原健一郎氏)、2番目のぷぅちゃん(テノール・黄木透氏)、末っ子の妹ぶぅちゃん(ソプラノ・中畑有美子氏)が歌い、ピアノ(青木瞭弥氏)、フルート(宮越悠佳氏)、三味線(しゃみお氏(3x4xS))、チェロ(オオカミ・大工役のヌビア氏(3x4xS))が演奏する。ふぅちゃんが藁で、ぷぅちゃんが木で家を作るが、オオカミが吹き飛ばしてしまう。だが、ぶぅちゃんが作ったレンガの家はオオカミに吹き飛ばされることなく、3匹のこぶたが揃ってオオカミをやっつける。
 子どもに人気のある曲には場内が沸く。大ヒットアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ《紅蓮華》は手拍子もひときわ盛り上がり、オオカミをやっつけたところでの《さんぽ》は長く愛されてきたアニメ「となりのトトロ」のオープニングテーマだけに、子どもたちから大きな拍手が起こった。ふぅちゃんが歌った《オンブラマイフ》(オペラ「セルセ」より)は深みのある曲。観客はその美声と美しいメロディに聞き入り、ぷぅちゃんが歌った《女心の歌》(オペラ「リゴレット」より)は声が曲に合っていて見事な歌唱。大人たちが拍手喝采。
 着ぐるみを着たオオカミが出てくるたびに、子どもたちは「こわーい」とおびえた様子。大人が見ているものと、子どもたちに見えているものは違うのだ。ぷぅちゃんが木の家を作る間、幾つもの白く丸い光が会場内を移動し、子どもたちが目で追う。音にも敏感に反応し、歌に合わせて身体を動かす子もいた。公演時間1時間とあって展開が速いが、ステージから「お手々を上げて」「手拍子で応援して」と声をかけられると素早く反応する。ちゃんと集中して見ているのだ。
 演者たちは歌はもちろん、セリフもはっきりとして声が伸び、動きも軽快で柔らかく素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
 私たち大人が文化という栄養をあげて、舞台を見ていた子どもたちのキラキラした瞳がいつまでも輝き続けることを心から願った。

ボランティアライター 青栁有美

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 完売御礼!四隅までまんべんなく来場者が着席。前から2列目の席に座った。左隣に赤ちゃんがいる。気が散ってしまいそうな可愛さだ。
 プログラムを開いて目にとまったのが、『女心の歌』(G.ヴェルディ作曲)。10曲目らしい、楽しみだ。他の曲にもざっと目を通した。公演は1時間のはずだが、22曲も並んでいる。所々にモーツァルトやシュトラウスなどのクラシックあり、鬼滅の刃やジブリのアニメソングあり、NHK子ども番組の曲や長唄まである。なんとも不思議な曲順だが、ここに福嶋頼秀氏作曲の『3匹のこぶた』の楽曲が加わると、歌とピアノ、フルート、三味線による音楽劇がまとまった。
 物語は、お兄ちゃんこぶだが建てたわらの家と木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまうけれど、末っ子のレンガの家は丈夫で・・・というお話をもとに、お腹をすかせたオオカミがなんとかしてこぶたを食べようとして…ではなく、「おおかみさん、もう、森の生き物たちにいじわるしないでね。」「わかったよ。でも、家を建てるときは、ちゃんと挨拶ぐらいしろよ。」と、仲良く幕を閉じるものだった。
 こぶたを演じるのはオペラ歌手の方々なので素晴らしい歌唱力!なのに、ふとステージに目を向けると黄色・青・ピンクの膝丈サロペット姿。そのギャップがおかしくて笑いをこらえた。
 オオカミは全身着ぐるみで楽器の説明やこぶたとのやりとりで劇を進行していたが、実はチェロ奏者。どうりで『春の海』を「♪てん、てけてけてけてん(ミーシレシラシラミ)」と口ずさんだとき、妙に音楽家っぽかったはずだ。三味線奏者は袴姿に狐のお面。このチェロと三味線のお二人は撥擦自在(ばっさつじざい)を掲げるユニットで、息の合った弦楽器の和洋折衷を聴かせてくれた。
 こどもの興味が途切れないような奏者と観客との掛け合いや触れ合いが難しくなっているが、一体となって楽しめるプログラムにはさりげなく新しい工夫がされているのだろう。
隣の赤ちゃんはうとうとしていて、会場の拍手ではっと目を覚ますと、またまぶたをゆっくり下げた。どんな気分なのだろう。今日の会場は、ちょっとくらい泣いた赤ちゃんも外に出たりしないで、周りも「そのうち泣き止むでしょう」くらいの気持ちでいたように思う。
 ほかの演目も観たくなって、【公式】こどもオペラ (@kids_opera) / Twitterを覗いてみたらとても面白そうだ。ぜひまた、なぎさホールで演奏していただきたい。

ボランティアライター 深谷香

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