イベントレポート 「さざなみ亭落語会 三遊亭わん丈&みんなで創る落語会 其の五」2021年11月13日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします。

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 コロナで数々のイベントが次々中止になって早2年。久々の文化プラザホール‟さざなみ亭”は、小ぢんまりして客席と舞台が近く、本物の寄席気分だ。入り口で落語にしてほしい事を付箋に書いて貼るというのは、私には初体験。なにが起きるのかな?と楽しみに入ると、すでに満席。中には子どもの姿もちらほら。
 前座の三遊亭ごはんつぶ氏、久々に生で聞くよく通るプロの芸人の声にまず、引き込まれた。会場は嬉しそうな笑い声に満ち、ああ、やっぱり生はいいなあ、と思う。
 満場の拍手で前座が送られると、わん丈氏の登場。さざなみ亭落語会も早5年目、大ホールの落語会でも何度も前座を務めた彼の姿に、客席は久しぶりに親戚にでも会ったような温かな雰囲気に満ちた。自分の近況や、師匠円丈氏のエピソードを織り込んだ軽妙な枕で座を沸かせる。演目についての解説や、噺家の世界の決まり事なども織り込んでくれるのでさりげなく勉強になる。
 続く本日の演目は事前投票で決まった「孝行糖」。飴売りの呼び声の長台詞、わん丈氏得意の芸の見せ所だ。そして入口の付箋の謎が解けたのは、そこから3つの言葉を選んで、即席で小噺を作って披露するという。会場も、じゃんけんで単語選びに参加して楽しい。
 15分の仲入りが過ぎ、玉子どん、プレッシャー、など脈絡ない単語を使って見事にまとめてみせたのには、大いに感心した。
 最後は彼が真打昇格を目指す中取り組んでいる円朝の大作「牡丹灯籠」についての解説と、「お露新三郎」のひとくさりを披露。「牡丹灯籠」と言う作品は複雑な構成になっていること、落語化されていない章がたくさんあることも初めて知った。逗子の学校でワークショップを続けてくれているおかげか、大人にも子どもにも学びがあって、楽しいひと時になった。
 終始一貫した温かい「小屋」の雰囲気に、前座の頃からずっと見守る常連のお客さんたちの存在が、若い芸人を育てて行くのだな、と感じた。まさに「みんなで創る落語会」。見る側が育てて行く芸の楽しさというものを体感することができた。

ボランティアライター 不破理江

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 コロナの感染者数が、ようやくさざ波程度に減少した11月、今や逗子を第二の故郷としているお馴染みわん丈さんの落語会が開かれました。さざなみホールには老若男女が大勢集まり、感染対策の中、大変な賑わいでした。
 まずは若旦那風の前座、三遊亭ごはんつぶさんが一席。浅草のさびれた茶店を営む老夫婦が、落ちていた「のぼり」をお稲荷さんに返すと、そのご利益か客がぞろぞろやって来て、茶店は大繁盛。それを見ていた閑古鳥の鳴く近所の床屋さん。あやかろうと、お稲荷さんに祈願に行けば早速お客が到来。喜んでひげをあたると、後から後から新しいひげがぞろぞろ伸びてきて…。「ぞろぞろ」という演目だそう。
 さて、わん丈さんの登場。まずは、恒例其の一、お客さんの事前投票(五席から一席を選ぶ)による演目決定。選ばれたのは「孝行糖」。本人はこの場でお題を知るってことで、必死に(?)噺を思い出しつつスタート。親孝行でお上から表彰され、大金をもらった与太郎さん。大家さんからの提案で、「孝行糖」という飴を売ることに。鳴り物付きで、派手に売り始めるとたちまち大評判。しかし、厳しい水戸家の屋敷の前で、うるさいと門番にめった打ちに。通りかかりの者に助けられ、「どこをやられた?」と聞かれると「こうこうと、こうこうと」…って、ダジャレかい!と思わず突っ込みたくなるオチ。気の優しい与太郎さんは、わん丈さんにピッタリ。
 次に恒例其の二、即興三題噺。入場時にお客さんからお題を付箋に書いてもらい(約30題!)、会場で作者全員のジャンケン大会。勝ち残り3人のお題で、即興で小噺を創って披露するという荒業です。選ばれたのは「博多・天神落語まつり」「玉子どん」「プレッシャー」。創作時間は休憩の15分間。さてその出来は?夫婦喧嘩で腹立つ奥さん、夫に天丼をリクエストされスーパーで食材を買うも、食卓に出てきたのは玉子どん。料理もしないで威張るばかりの夫に「いい気味(黄身)だ!」ときた。お見事です。
 最後にサプライズが…。わん丈さん、日本三大怪談の一つ「牡丹灯籠」に取り組んでいるとのこと。22章からなる一大ドラマで、登場人物も20人以上。前半の中心部分となる新三郎とお露が出会って、互いにひと目惚れする一幕を披露してくれました。二人の目と目が合ったその瞬間、なんと「ラブ・ストーリーは突然に」のイントロが突然流れ、わん丈さん、たっぷり一番を歌い上げたのでした。さすが、実験落語で一世風靡した円丈師匠ゆずりの仕掛けに、皆、口がポカンでした。全編通して聴いてみたいと強く思ったのでした。
 さざ波ではなく大波の笑いで、わん丈さん、見事にコロナを飲み込んでくれました。お後がよろしいようで。

ボランティアライター 三浦俊哉

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