イベントレポート 「さざなみ亭落語会 三遊亭わん丈&みんなで創る落語会 其の七」2024年2月17日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 開場前から長い列が出来ていた。三遊亭わん丈さんは抜擢真打昇進が決まっている。慶すべし祝すべし、満席である。
 今年も入り口で三題噺のお題を募集している。来場者が心々の言葉を書いた付箋がいっぱいだ。どの3つが組み合わされても、見事な一席が仕上がるに違いない。
 「どうも、よろしくおねがいします。」と現われたわん丈さんは意表を突きスーツ姿だ。すかさず「着物を忘れたわけじゃないですよ。」と。一緒にトークを始めた“寸志あにさん”を「この会、初ゲスト」と紹介した。客席にお子様の姿を見つけて、「アート便」という活動にも触れた。アート便とは逗子文化プラザホールが市内の幼稚園や小中学校などにプロのアーティストを派遣するアウトリーチプログラムのことだ。わん丈さんから、すらすらと地域の学校の名前が出てきて、とても嬉しく思う。
 柳家しろ八さんの《元犬》と、立川寸志さんの《片棒》の話しもしたいのだが、わん丈さんの話しをしよう。
 わん丈さんは、私が初めて落語のライブに臨んだ噺家さんだ。2019年の「さざなみ亭落語会“其の三”」、わん丈さんが36歳のときだった。あれから数年が経つわけだが、やわらかい白茶色の着物に青緑の羽織姿で深く長くお辞儀をする姿が変わらず美しく見惚れた。
 まずは《荒茶(荒大名の茶の湯)》。おかしな場面を想像し聴きつつ、舞台である加賀百万石に、わん丈さんの故郷である滋賀と、いまの能登半島への思いを勝手に感じていた。
 そして三題噺のお題は、じゃんけん大会により「岩手」「婚活」「不適切」に決まった。わん丈さん曰く、来場者のお題の出し方が上手くなっているらしい。「岩手」というキーワードから大谷翔平選手も登場するお話ができあがった。どこかで再演されるかもしれないが、できたてほやほやの落とし噺は格別な味わいだ。初演の醍醐味もあるが、予習も良いもので、数日前から動画でわん丈さんのとある一席を繰り返し聴いていたのだが、最後の一席がまさにそのお噺《井戸の茶碗》だった。冒頭で分かるゾクっとした感覚も良かった。
 黒い着物で高座を引き締めるわん丈さんは、そのうち落語界のイケおじと呼ばれそうな佇まいだ。抜擢真打昇進についても話された。昨年の3月16日午後2時3分、電話が来たそうだ。昇進を受け止めるわん丈さんを側で見守るような臨場感があって、落語を興がる空気から一瞬現実にシフトして感動がこみあげた。
 わん丈さんの二ツ目おひらき真打はじまりの2024年、重みのある「さざなみ亭落語会」だった。

ボランティアライター 深谷香

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