イベントレポート 「宮田大×山崎祐介 スペシャル・デュオ ~チェロとハープによる美しい音色~」2024年3月20日(水・祝)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 日本を代表するチェリスト宮田大氏が、ハープ奏者山崎祐介氏と共におくる2時間。もちろんチケットは完売。客席は満員。開演前に渡されたプログラムを見ると名曲ばかり14曲。期待が高まる。
 14時開演。始まってすぐに宮田氏のずば抜けた力量を感じた。高音と低音、音の強弱が途切れることなくナチュラルに変化し、その音色はつややかでどの音も魅力的。曲にこめられた様々な思いを深く表現するテクニックも見事。今まで聴いた中で最高のチェロだ。
 音楽はアレンジで印象が大きく変わると思わせたのが、《オンブラ・マイ・フ(ラルゴ)歌劇「セルセ」より》(G.F.ヘンデル)。何度も聴いたことのある曲だが、チェロとハープで弾くとまた違った趣。落ち着いた静謐(せいひつ)な作品に仕上がっていた。《白鳥「動物の謝肉祭」より》(C.サン=サーンス)が深く心に沁みたのはチェロの伸びやかな演奏によるものだろう。ハープの音も隅々まで行き届いていた。ハープソロの《引き潮》(R.マクスウェル)は有名なポピュラー音楽。大人の恋を感じさせるようなロマンチックなメロディに、ハープがとても合っていてうっとりとした。夢を見ている気分で、いつまでも聴いていたかった。《チャールダッシュ》(V.モンティ)はヴァイオリンでよく演奏される曲。テンポの速さが聴きどころの1つだが、今回はチェロでメロディの魅力を前面に押し出していた。もちろん高度なテクニックでスピーディーに弾きこなしていたが、メロディの美しさを際立たせるアレンジもまた良かった。《アヴェ・マリア》(G.カッチー二)では、チェロがこの曲の持つ聖なる輝き、高潔さ、純粋さ、優しさを感じさせてくれた。何て美しい音楽だろう!
 今まで聴いたことのない素晴らしいチェロだった。ハープも細やかに支え、2つの楽器がうまく調和していた。ゆっくりとした曲調の作品を揃えたとのこと。14曲+アンコール2曲を1つ1つ丁寧に演奏してくれた。その静けさ、深さ、柔らかさ、優しさで、心が澄んでいくような気がした。
 春分の日の午後の贅沢なひと時だった。

ボランティアライター 青栁有美

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 今回は早々に完売御礼の札、だのに演奏者が何者かも良く知らぬままに又会場へ赴いた。チェロとハープの珍しい組み合わせ、一体どんな音楽が展開するのだろう?
 美しいハープが置かれた舞台に演者登場。水を打ったような静けさの中で放たれた第一音から目を見張った。澄み切ったハープの音色と組み込み合うように響くチェロの音が、「呼吸している!」。響いているのは木そのものだ、これは確かに楽器とホールの木が共鳴しあっている、この音は木が呼吸をしている音だ。J.S.バッハに続く《オンブラ・マイ・フ(ラルゴ)歌劇「セルセ」より》ではピアニシモの音に導かれて突如目の前に大きな世界が広がり、巨大な樹の姿が浮かんだ。宮田氏が、「ハープとチェロの組み合わせはどこか懐かしい幸せの音がする。本日はゆっくりした曲をたくさん演奏して、いろいろな懐かしい世界へ皆さんを導けるようにと思っている。」と挨拶をした。一曲目は母の胎内、二曲目で幼い頃を感じて弾いたということ。明確なビジョンを感じて演奏し、それを言葉で語るところも面白いと思った。続いては鳥の歌シリーズ。白鳥ではかつてテレビで見た伝説のバレリーナ、プリセツカヤの踊る姿が目の前に浮かび涙がでそうになる。どの一曲もはっきりと映像が浮かんでくるようだ。そして気づいたのだが、宮田氏はチェロを弾きながら自分で歌うように深い呼吸をしている。その大きな呼吸音が客席近くまで聞こえてくるようだ。
 一転して披露した米国の現代曲ではジャズさながらに弦を弾き、叩き、チェロのイメージを覆した。《チャールダッシュ》では、彼の冒険家魂を痛感させられる。ソロを披露した際、山崎氏が「古い楽器なのに、叩いてましたね」と可笑(おか)しそうに、そしてちょっと心配していたのも面白い。
 後半も繊細なハープの音色とチェロの息の音が織りなす多声音楽のタペストリーに酔いしれた。セロ弾きのゴーシュではないが、心も体も癒されていく。何といっても圧巻はアンコール二曲目の《亡き王女のためのパヴァーヌ》だった。揺蕩(たゆた)う小舟に横たわっていたように、細胞がいつまでも振動を記憶しているような余韻が残る演奏会だった。
 惜しみなく演奏してくれたお二人と、また一つ私の知らなかった演者との素敵な出会いをプレゼントしてくれた文化プラザホールに感謝!

ボランティアライター 不破理江

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