ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします。
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竹林のなかでメンバーが思い切りジャンプしているチラシを見て、これみたい!と思った。“楽団”の間に“竹”が入って“らく・たけ・だん”。楽しそうだ。
大型の竹楽器が並んだ舞台が面白い。竹といえば鹿威し(ししおどし)の“コン”という音のイメージで、リズム楽器を想像していたが、音階もあった。竹マリンバと紹介された楽器は、竹でできた木琴みたいだ。ホッとするような音色がころころと転がってくる。まるで自然浴。
公演の前日、フィリピンの竹楽器(バリンビン)を作る小学生向けのワークショップがあった。リレーのバトンくらいのサイズの竹筒に縦に半分くらいまで切り目を入れてつくる打楽器で、竹筒のサイズで音程が変わるようだ。参加した子どもたちが、自作のバリンビンを片手に、横一列ステージに並んだ。「びん・びん、びぃぅぉ~ん・びぃぅぉ~ん」と、弦のような響きが1分ほど打ち鳴らされた。楽器を作って練習して舞台で演奏してワンセット、それは音作りを竹の切り出しから始める楽竹団の“ものづくり”と重なる。
「泣いても踊っても歌ってもいいです。」そんな言葉で始まったコンサートには、素直にリアクションできる自由な雰囲気があった。
《手マリ唄》では2人の奏者が両手に持った竹の楽器をポンと鳴らしマリを投げ、相手もポンと鳴らして受け取った感じを出す、エアキャッチボールのようなあそびをした。そのマリが客席へも投げられる。マリが飛んできた人は両手をパンと鳴らして返すお約束だ。自分の所へ飛んでくるのではないかと座席から腰を浮かせて期待する子どもや、顔の前に両手を用意して待つ大人の姿も見られた。
《鬼が島奇譚(きたん)》もよかった。1台の竹マリンバで桃太郎のストーリーを演奏する。桃太郎と猿が「♪ももたろうさん、ももたろうさん♪」と仲良くきび団子をあげていると、いじけた鬼が「♬鬼のパンツは良いパンツ、つよぞ♬」と弾く。3人で1台の竹マリンバと、お互いの曲を乗っ取り合うように演奏し、最後は仲良くメロディーも混ざり合う。きび団子をもらえない鬼が悲しそうにしていると、子どもの声が「おぉにぃ~ぃ」と、悲しみに共鳴した。ジーンとした。マルッと感動のなぎさホールである。
終演は午後3時。明るく陽の射すホワイエに竹細工が飾られていた。
この日は“ホールのお仕事をやってみよう♪こどもレセ体験”がおこなわれていたらしい。ほんの1時間前に、少し屈んでチケットを渡す私を、すこし見上げるように迎えてくれた男の子を思い出しながら、まだ賑わうホールを後にした。
ボランティアライター 深谷香
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0歳から参加できる、泣いてしまっても構わない、途中退場しても気にしないコンサートです。
東京楽竹団は、文字通り、竹でできた楽器を操る楽団です。当日は、男性2人、女性3人の5人編成でやって来てくれました。楽器はすべて、一本一本竹を切り出す作業から始め、メンバー手作りとのこと。鍵盤が2段になっている木琴、いや竹琴の「竹マリンバ」。くり抜いた長さの異なる竹を、斜めに立てて並べた「マウイマリンバ」。アルペンホルンのように、2本の長ーい竹を斜めに置いた「スーパーマウイ」。あごくらいまである太くて長い竹を、縦に上から叩きつける「スタンプ」。細い竹の先を、音叉(おんさ)のように二股に切り取った「バリンビン」、などなど。すべて、手や、バチなどを使って音を出す打楽器です。そして、竹の中に、“何か”を入れて波の音を出す「波筒」と、唯一の管楽器「尺八」。森の息吹を感じさせるフォルムの楽器を、妖精のようなカラフルな衣装をまとった男女が紡ぎだす音楽は、正に神秘的で、不思議に心が和みます。
幕開けの、鳥の鳴き声と波音を模したメロディーから始まった「バリ」は、「竹マリンバ」の調べが耳なじみのあるインドネシア音楽風アレンジで、「ああ、この音は、まさしく竹の音色だったんだ」と改めて気づかされました。同じ音色で続いた日本の童謡「ずいずいずっころばし」は、異国情緒あふれる仕上がりに癒される気分です。楽団初代代表の橘政愛作曲「竹の大地」は、「スタンプ」を黒い幹に叩きつけて発する「びよーん」といった足音のような響き、「スーパーマウイ」の横を叩けば高く乾いた音、くり抜いた先端を叩けば「ぼよーん」と聴こえる重低音と、実に素朴でゆったりした音たちの競演です。イギリス民謡(「ピクニック」)、アニメソング(「さんぽ」)、音楽劇風(「鬼が島奇譚(きたん)」)、歌謡曲(「島唄」)、オーケストラ風民謡(序(じょ)・馬子唄(まごうた)・八木節(やぎぶし)))と、バラエティ豊かなラインナップも、竹の音色にかかると、すべて素朴で懐かしくて心が落ち着きます。前日に子どもたちがワークショップで作った「バリンビン」を、自分たちで鳴らして披露してくれた「スペシャルコラボレーション」は、小さな手で叩いて出した音が、とても一生懸命で、竹の楽器って、不揃いな音でも、それがいい味になって心に沁みるなと、実に幸せな気分にさせてくれました。
このコンサートは、お子様向けと思いきや、実は、子育てに忙しい親たち、人生に少し疲れた中高年、そして連日の記録的な酷暑にダメージを受けているすべての人たちに、清涼と癒しを施してくれた1時間であったようです。
ボランティアライター 三浦俊哉
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