イベントレポート 「国府弘子ソロピアノコンサート in 逗子」2026年2月21日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 ステージは国府弘子さんが作曲した『「ピアノ一丁」のテーマ』で幕を開けた。その瞬間、なぎさホールの天井、いや大空から澄み切った音の雨が降り注いでいるような感覚を覚えた。ステージのライティングも、次第に青みを帯び、幻想的な空間が広がってきた。
 国府さんがマイクを取り、次の曲L.ハーライン作曲『星に願いを』を少しおちゃめな雰囲気で紹介した。その演奏は美しい。私だけだろうが、1985年に星となった坂本九さんが歌う『見上げてごらん夜の星を』の旋律が、どこか遠くから重ねって聴こえてくるような気がした。
 ジャズナイズされた『枯れ葉』は、良い意味で期待を裏切られる演奏だった。シャンソン歌手イヴ・モンタンの甘く切ない歌声が、ピアノという楽器を通して観客の心を揺さぶっているかのようだった。
 ここから国府さんが作曲や編曲した楽曲が4曲続く。『コズミック・ランデヴー』は、最新アルバム「ピアノ・パーティ」に収められている、国府版『星に願いを』だそうだ。続く『アディオス・ノニーノ』は、バンドネオン奏者と知られるA.ピアソラの名曲。ラストは、G.ガーシュイン作曲、国府さん編曲による『ラプソディ・イン・ブルー』。大都市の雑踏や息遣いをアートとして音楽に昇華したような演奏だ。
 休憩を挟んで第二部は、観客のリクエストに応える映画音楽のステージとなった。「働いて、働いて、働き続ける」日々の中で、映画をゆっくり観る時間はほとんどないのだが、不思議なことに映画音楽だけは耳に、そして心の中に残っていた。
 数多くのリクエストの中から選ばれた曲のひとつが、私もリクエストした映画「カサブランカ」より『As Time As Goes By』を実際に演奏してもらえたことは、忘れがたい喜びとなった。他には、国府さんが初恋をしたという、アラン・ドロン主演映画から『太陽がいっぱい』など多数の懐かしさを覚える曲が演奏された。
 国府さんのステージ構成の巧みさが際立った演奏が2つあった。ひとつ目は、ピアニカを用いた寅さん映画「男はつらいよ」のテーマ。日本人の心に深く根付いた旋律で会場の空気を一変させ、観客を惹きつけた。ふたつ目は、国府さんから観客への贈り物として演奏された映画「グラディエータ」の音楽。今年の冬季オリンピックのフィギュアスケート・ペア競技において、前日の演技で5位となりながらも、最終日の演技で圧巻の滑りで金メダルを獲得した“りくりゅう”ペアが取り入れた楽曲だ。力強く、そして優雅な滑りは国府サウンドと素敵なマッチングだ。小柄な三浦選手が、長身の木原選手を励ます姿までも。
 国府さんの演奏はいうまでもなく素晴らしい。しかしそれ以上にストーリー性を持ってステージ全体を創り上げるその才能の秀逸さを体感できたのは嬉しかった。

ボランティアライター 海原弘之

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 寒かった冬も既に立春を過ぎて春が待ち遠しい今日この頃、身体の芯から温めたくて国府弘子さんのコンサートに出かけた。国府さんのコンサートは初めてだけど、エネルギッシュな演奏が評判と友人から聞いていたからだ。
 逗子文化プラザなぎさホールのロビーは、開演前から多くの国府ファンで賑っていた。席について観客席を見渡すと、大半は中高年の方々だとわかる。顔を見れば、本当に楽しみにしているのが良くわかる。
 前半の初めは、作曲も自ら手がける国府さんのオリジナル曲『「ピアノ一丁!」のテーマ』でスタート。軽やかなタッチできらきらと輝くような音色でラテン的な明るさを感じる。そして、ディズニーから『星に願いを』が続いた。この曲もキラキラと輝く星が目に浮かぶ演奏。
 前半最後は、G.ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』で締め。大好きな曲で、聴いているとマンハッタンにいる気分になる。
 後半は、どんなステージになるのだろうか。そう言えば、コンサートのチラシには、後半はお客さんのリクエスト曲を演奏すると書いてあった。うっかり見逃していてリクエストしたい曲を考えてこなかった。自分の好きな曲がちゃんと入っているだろうかと心配してしまった。でもそんな心配は無用だとわかった。リクエスト曲が書かれた用紙を山のように抱えて、国府さんが現れたからだ。これだけのリクエスト曲があれば、自分の好きな曲もきっと入っているに違いないと一安心。実際そのとおりで、エーデルワイス、ゴッドファーザー、エデンの東、ひまわり、ムーンリバー等々、好きな曲ばかり!ほとんどが映画の主題曲で、20曲以上を披露していただいた。どうりで、中高年のお客さんが多いのは頷ける。これらの映画を若い時から散々見てきた映画ファンが多いに違いない。
 国府さんの明るくフランクなお人柄もあって、観客との一体感を大事にする気持ちが伝わってくる。トークも音楽も常に観客との距離感への気遣いがあって観客に心地良さを与えてくれる。大型のホールではない「なぎさホール」のサイズ感もこのようなコンサートに適しているように思う。
 来年は、デビュー40周年との事。益々の活躍が期待されるし、『岩崎宏美さんとのデュオ』や『国府弘子アコースティック・トリオ』のコンサートにも行きたいと思う。
 とりあえず、銀座のライブハウスに行ってみようっと。

ボランティアライター 福岡伸行

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 春の予感が感じられる快晴の日の「国府弘子ソロピアノコンサートin逗子」。ジャズピアニストのコンサートとあって、ホールには子どもの姿はなく、聴衆の年齢層は高め、静かな雰囲気だ。ホール客席の三分の二ほどが埋まっているが、なぜか私の周囲は見通しよく、おかげで舞台がばっちりよく見える。本日後半はリクエストに応えてくれるという物凄いお楽しみ付きだ。
 なんの装飾もない舞台にさりげなくピアノが一台置かれている。そこに華やかな花模様の衣装で国府氏が姿を現すと、お!聴衆の拍手が熱い!待ちかねたという気持ちが伝わってくる。演者はおもむろに立ったままピアノを弾き始める。あれ、これは何だろう、聴きなれたホールのスタインウェイの音が、ちょっと煙草でしゃがれた声のような、ジャズの音になっている。一曲弾き終えると頭を斜めに傾けてにこっ、と聴衆に微笑みかける。それがまたチャーミングだ。やや低めの声で、今日はご一緒に楽しい時間を、と笑顔とぴったりの温かな語り口で楽曲を紹介していく。宇宙飛行士との対談で着想を得たという《コズミック・ランデヴー》に続いてA.ピアソラ《アディオス・ノニーノ》ではオーケストラさながらの迫力ある重層的な演奏。それが《ラプソディ・イン・ブルー》になるとクラシックの音とジャズの音両方を混ぜたような音色になる。すべてにたっぷりとゆとりがあって、ぎりぎりと詰め込むようなところがない。これでもかと見せつけるような気負いもてらいも一切ない。音と時間がゆっくりと流れるアラベスク模様のように会場を豊かに満たしていくようだ。
 後半は、観客の書いたリクエスト用紙の束を手に、素敵な真っ赤なミニのワンピースで登場。会場と気さくに会話しながら懐かしく美しい映画音楽を次々奏でていく。「サウンドオブミュージック」、「追憶」、「シャレード」、「ひまわり」、「慕情」…。昔の映画音楽はなんて心に沁みるのだろう。デジタル時代のガチャガチャした音に日々囲まれて、なんて疲れていたんだろう、と気づいた。軽妙なおしゃべりの最後に演奏したのは圧巻の《戦場のメリークリスマス》だった。アンコールに地球が、皆様が平和であるように、と祈りを込めて自作曲《You Tune My Heart》を演奏してくれた。急変する時代の流れに静かに掉さす音楽の愛のエネルギーに包まれた気がした。慈しむような時間を共有してくれて、国府さん、皆さん、どうもありがとう!

ボランティアライター 不破理江

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