五番目物の傑作として名高い「石橋」と、おなじみ太郎冠者と主人とのやりとりがいつものように笑いをさそう、和泉流にしかない狂言「隠狸」、桜の精の舞「西行桜」。
幽玄な春をお楽しみください。
仕舞 西行桜 観世 銕之丞
西行の庵に満開の花を咲かせる桜の老木。その花目当てに訪れる花見客の煩わしさも「桜のとが」だと西行は歌に詠む。やがて現れた老桜の精はその西行の歌をとがめて…。
西行の和歌を題材に老桜の精が閑寂な舞を舞うという枯れた味わいの能。仕舞では老桜の精が都の桜の名所を数え上げて舞を舞う部分を見せる。
狂言 隠狸 野村 万作 野村 萬斎
太郎冠者が狸を捕える名人だと噂に聞いた主人。しらを切る冠者に、主人は狸汁を客に振る舞う約束をしてしまったからと、急いで市場で狸を買って来るよう命じる。
しかし冠者は主人の命令そっちのけで昨晩捕えた大狸を市場で売り歩く。そこへ主人が現れ、大慌て。冠者はそれでもしらを切って逃げようとするが、主人は往来に座り込んで酒を飲み、遂には冠者に舞を所望する。冠者は狸が見付からぬよう苦心して舞を舞い…。
能 石橋 柴田 稔
中国の清涼山を訪れた寂昭法師。その谷底は霧が深く立ち込め、身の毛もよだつ深さである。そこに架けられた石橋を寂昭が渡ろうとすると不思議な童子が声をかけ、この橋は名のある高僧でさえ渡ることが困難な橋であると、寂昭を引き留める。
やがて文殊菩薩がいる浄土である橋の向うより霊獣獅子が現れ、咲き匂う紅白の牡丹に勇壮に舞い戯れて千秋万歳を寿ぐ。
獅子が牡丹の花に俊敏且つ豪快に舞い戯れる様をダイナミックな動きと激しい気迫で演じる重い習いの曲で、祝言性にあふれた能。