★イベントレポート「熊本マリ×溝口肇 ~音楽で旅するコンサート~」2019年2月9日(土)開催(2019年03月23日)

青栁様 河島様 三浦様

当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

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 あいにく、前日の天気予報では、積雪の可能性も出されていた。どうなることかと心配したが、当日、開場前の逗子には雪も雨も降っていなかった。ホッと一安心してホールに向かう。

 14時。ピアニストの熊本マリとチェリストで作曲家の溝口肇によるコンサートがスタート。熊本氏のピアノには強い張りがあって、光が射し込むように明るい。シューマンが結婚前に妻となるクララに贈った《献呈》は、華やかで、彼の喜びと幸せが溢れている(ピアノソロ)。ラフマニノフの《ヴォカリーズ》は、悲しみに満ちたメロディをチェロが見事にリードした。それにしても、チェロの音色のなんと深みのあることか。改めて、その魅力を堪能した(ピアノ・チェロ)。エンニオ・モリコーネの《ニュー・シネマ・パラダイスよりメインテーマ》は何回聞いても美しい。旋律がピアノとチェロにピタリとはまる。あの映画で描かれていた楽しかった子ども時代。もう戻れない昔を思うときの切なさと甘さが、十分に感じられる時間だった。《おてもやん》は熊本氏のテクニックが冴え、音色も曲に合っている。リズミカルで陽気で楽しく、もとは熊本民謡のこの曲からは、熊本女性のたくましさや明るさが伝わってくるようだった(ピアノソロ)。特筆すべきは、これらすべての曲から、楽曲にこめた作曲家の思いが深く伝わってきたことだ。演奏によるところも大きかったように思う。

 ところで、今回のテーマは音楽で世界を巡る旅。その地を強く意識させたのは、スペインの作曲家グラナドスの《アンダルーサ》。スピード感と激しさがありながら、翳りを感じる曲を、熊本氏が巧みなテクニックと表現力で弾きこなした。テレビ、写真、絵画などで見るスペインの光、影、熱が思い浮かぶ(ピアノソロ)。そして、ピアソラの《リベルタンゴ》。ピアノの情熱的な激しさをチェロが包み込むように支える。なんともアルゼンチン的で印象に残る演奏だった。

 途中、スライドで、溝口氏が海外で撮ってきた美しい風景写真や熊本氏が描いた絵を見せるコーナーも良かった。

 音楽で旅を楽しんだあと、ホールの外に出るといきなり現実に引き戻された。あたりが薄暗くなりかけた夕刻、雪の舞う寒さに震えながら、家路を急いだ。

情報発信ボランティアライター 青栁有美

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 「これから雪が降るかもしれない」なんて予報がでている3連休の初日、熊本マリさんと溝口肇さんが紡ぐピアノとチェロのコンサートに行ってきました。

 会場はなぎさホール、いつ来ても落ち着きがあるいいホールです。ホワイエではワインも飲めますが今日は我慢です。

 第1部が始まりました。1曲目はお馴染みの《世界の車窓から》。ピアノもそうですがチェロの音色がまるでホッカイロのようです。

 奏でるメロディーの進行に合わせて風景も、空気も旅するように変わっていきます。「徹子の部屋に追い付きたい」という溝口さんのコメントの後に続けてピアノとチェロのソロをそれぞれ1曲ずつ。

 曲はモンポウ《歌と踊り》、《鳥の歌》です。熊本さんはスペイン作品の取り上げ方がうまいと思いプロフィールをみたら納得しました。

 続けてラフマニノフの《ヴォカリーズ》。1フレーズ聞いたら「あ、この曲か」とわかる切ないメロディーを二人は次から次へと奏でてくれます。ショパンの《ノクターン》、シューマンの《献呈》、プッチーニの《トゥーランドット》と続き、1部は《ニュー・シネマ・パラダイス》で締めくくりです。

 曲中何となく思っていましたが、熊本さんと溝口さんは観客一人一人に「今」と「思い出」の間を旅させてくれます。夕陽に向かって「待ってー」と言っているのに追い付けない微妙な気持ち。なんかうるうるきそうで、「この場所・この時間に入れて本当に良かった」と改めて実感しました。

 2部は、溝口さんが自身のスライドに合わせての即興演奏にプログラム変更です。負けじと(!?)熊本さんも演奏曲を変えてきました。2人とも聞かせる曲はゆったりとしているのですが、紡ぎだす音の空気感が乾いた感じで、いよいよ「旅している」気持ちです。

 《故郷》《おてもやん》と日本を経由して《リベルタンゴ》が終着地です。最初はどちらもおとなしい印象もありましたが、最後は雪にも負けない熱さのバトルとなり、大団円で終わりました。

 意外な発見もあります。ラスト1曲前の《おてもやん》がやんちゃてんこ盛りの演奏で俄然気分も盛り上がったことです。次は「民謡」で「日本を旅する」もありだと思います、マリさん!

情報発信ボランティアライター 河島三二

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 TVから《世界の車窓から》のテーマ曲が耳に流れてきた瞬間、どんなに疲れていても、気持ちがスーッと安らぎます。日常の喧騒からフッと離れ、遠い異国の地を漂う感じ…。今回のコンサートは、そんな“旅情”溢れる選曲と演出で、ウットリと癒された2時間でした。ピアニスト熊本マリさんと、チェリスト溝口肇氏の競演。忙しくて旅行なんてずいぶん行ってないわ…なんて人にはうってつけのプログラムだったかも知れません。

 まずは、溝口肇氏の代名詞、《世界の車窓から》でスタート。チェロの音色は、落ち着いた大人の響きが特徴です。溝口氏の静かな喋り口と、全身から醸し出される柔らかい雰囲気も、この楽器そのもの。溝口氏がチェロを選んだのか、楽器に選ばれたのか、運命的な出会いを感じました。

 一方の熊本マリさんも、色気と情熱を湛えた大人の女性です。ご挨拶代わりに、「スペイン」のモンポウ《歌と踊りより》をソロでしっとりと弾きこなしてくれました。ピアノは、外国語では“男性名詞”。マリさんがひとたび鍵盤に向かうと、決意や潔さなどの“男性っぽさ”が際立って見えます。でも、口を開くとちょっぴり舌足らずな甘え声で、男性諸氏はそのギャップにイチコロ(古い!)でしょう。

 旅は、同じ「スペイン」のカタロニア民謡《鳥の歌》(チェロ)から、「ロシア」ラフマニノフの《ヴォカリーズ》(チェロ、ピアノ)へ。さらに「ポーランド」ショパン《ノクターン第2番》・「ドイツ」シューマン《献呈》(どちらもピアノ)へと、いずれもロマンチックな音飛行。そして「イタリア」へ。プッチーニのオペラ『トゥーランドット』から《誰も寝てはならぬ》・モリコーネの映画《ニュー・シネマ・パラダイス》メインテーマ(いずれもチェロ、ピアノ)と、情熱の嵐に、しばし足止めの一時滞在。

 後半の始めは、溝口氏が、公演先の異国で撮った写真を“スライドショー”で披露。旅先での記憶の引き出しを開けることで、創作が始まるそうです。まさにこの日、氏が車で会場に向かっていたとき、羽田空港近辺で雪が降り出したそう。その時の幻想的な風景が忘れられず、後半の1曲目は急遽予定を変更し、強い想いを即興曲で弾いてくれました。氏には珍しくパッション溢れる1曲でした。パッションといえば、マリさんも、「アルゼンチン」のピアソラ《リベルタンゴ》を熱く激しく、「日本」の民謡《おてもやん》をジャズアレンジでスウィングしながら、カッコ良い演奏を魅せてくれました。アンコールは2人で「アメリカ」ガーシュイン《サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー》を。最後まで、“大人な”ムードを満喫しました。

情報発信ボランティアライター 三浦俊哉

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