★イベントレポート「若手演奏家シリーズ ♯9 Piacere -フルート四重奏-」2019年7月6日(土)開催(2019年08月26日)

当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

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 雨が降ったり止んだりのどんよりとした空。このうっとうしい天気を振り払うような演奏が聴きたいと思いながら、逗子文化プラザホールへ向かう。今日は同じ大学の同期(3年生)で結成したPiacere(ピアチェーレ)―阿佐彩夏、臼井源太、二階堂美玖、菅野桃香―によるフルート四重奏。開演時間が迫ってくる中、客席が徐々に埋まっていき、さあ、スタート。
 第1部は初めての曲が多かったが、聴いていて楽しい演奏ばかり。《3つの小品》(E.ボザ)第3楽章は、リズミカルなのにどこかクラシックの落ち着きを感じる。《夏山の一日》(E.ボザ)第2楽章は、4本のフルートがそれぞれ異なる旋律を吹き、それらが混じり合って不思議なアンサンブルを聴かせるおもしろい曲だった。《ディヴェルティメント・ジャズ》(R.ギヨー)第1楽章はおしゃれなメロディがステキだったし、第3楽章はジャズのメロディとリズムなのに清々しく爽やか。どの曲も確かなテクニックで演奏し、1つ1つの作品を堪能できた。途中、臼井氏が「緊張している」と言っていたが、そんな風には感じられなかった。それでも、懸命にフルートを吹く4人の姿はどこか微笑ましく初々しい。
 第2部は《ディズニー・プリンセス・メドレー》、《オペラメドレー》など馴染みのある曲が並んだ。中でも《魔笛》は、フルートに良く合うアレンジに仕上げられており、その上品さと優雅さでモーツァルトの世界を見事に表現していた(ピッコロ、コンサートフルート(普通のフルート)、アルトフルート、バスフルートを使用)。
フルート四重奏の魅力は、オーケストラなどとは趣がまったく違うところだろう。ロマンチックな曲をサラッと吹いたり、哀しいメロディが深刻になり過ぎず、フルートの音色の美しさだけが響いたり。大曲を軽やかにアレンジしたものもあり、あの華やかな《喜歌劇「こうもり」より序曲》(J.シュトラウス2世)がかわいらしく聴こえたほどだった。
 アンコールは《情熱大陸》(葉加瀬太郎)。速いリズムと哀愁漂う情熱的なメロディを4本のフルートが息を合わせて吹き、ラストにふさわしい幕切れとなった。
 帰り道。雨降る中、フルートの澄んだ清らかな音がいつまでも耳に残った。

情報発信ボランティアライター 青栁 有美

 

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 フルート四重奏と聞いただけで、ワクワクする。
 逗子文化プラザさざなみホールは、満席。女性が圧倒的に多いようだ。
 あとは、わたしのようなオジサンが若干目立つ。
 三浦市出身、逗子高等学校を卒業して現在は東京音楽大学在学中の臼井源太氏を先頭に同級生の女性が3人登場。
 フルートのべートーヴェンといわれたF.クーラウの『グランドカルテットOp.103』の演奏で始まる。
 臼井源太氏がマイクを握り、少しシャイな語り口で、演奏する曲の解説をしてくれる。
 今日の演奏グループは、大学の同期で結成した“Piacere”(ピアチェーレ)という名前。イタリア語で「はじめまして」や「喜び」「楽しみ」を意味するという。
 E.ボザの美しく、華麗ながらもミステリアスな魅力を感じた曲の演奏。『3つの小品』『夏山の一日』が続づく。
 雰囲気が変わりR.ギヨーの『ディヴェルティメント・ジャズ』で、心地よいスイング感がフルート四重奏で味わえるとは・・・。
 休憩をはさんで第2部。演奏者が、より華やかなドレス姿で登場。
観客の誰もが楽しめる曲講成だ。鶴薗明人『あめ』からスタートする。伊藤康英『フルーツ・パフェ』は、まさにこの演奏グループを音楽にしたようだ。フルーツの甘いジューシーな味わいと瑞々しさに溢れていた。
観客、みんなをあのディズニーワールドに誘ってくれたのが、清板輝史編曲 『ディズニー・プリンセス・メドレー』。
再度演奏・曲風の雰囲気を変えて、清板輝史編曲『オペラメドレー』は「魔笛」をはじめとする5曲で『ディズニー・プリンセス・メドレー』との聞き比べの妙が楽しいものだ。
 最後は、J.シュトラウス2世『喜歌劇「こうもりより序曲」』は、あのウインナワルツの旋律が、気持ちをあげあげにしてくれて、今にも踊りだしたくなってしまう。
終演して、帰り路。胸が浮き浮きしながら頭の中に、エドゥアール・マネ作の絵画「笛を吹く少年」の画像が今日のコンサートに重なった。
“Piacere”の4人は、大学卒業後いずれ異なる道に進むかもしれないが、マネの作品のように、多くの人たちに感動を与えつづけて欲しいものだ。
 後日、「笛を吹く少年」の吹いている横笛は「ファイフ」というもので、フルートのようなものだと、友人が教えてくれた。

情報発信ボランティアライター 海原 弘之

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 逗子で開催される演奏会って、ジャンルを問わず「原石探し」を楽しめるので、とても好きです。この街に暮らして何年もたつのにスルーしてきたので、「こわいもの」見たさで「若手演奏家シリーズ#9」に今回でかけてきました。
 会場はライブハウスな感じがするさざなみホールです。今回はフルート四重奏を奏でる「Piacere(ピアチェーレ)」というユニット。メンバー全員が東京音楽大学に在籍中の男子1名+女子3名で構成されていて、フライヤーをみても女子はみんな可愛くてどぎまぎしそうな予感がします。
  ステージ構成は割と王道な感じの前半、幅広めのジャンルの後半からなる2部構成です。ピッコロからバリトンの様々なフルートを適材適所で切り替え聴かせてくれて、考え抜かれたステージだなというのが第一印象でした。新鮮だったのは、指揮者がいないのにアップテンポもスローな曲も息がぴったりあっていること。よーくきくとわかるんですが、今日の演目はどれも半音ずつアップダウンのフレーズの連続できちんと練習してないとボロがでやすい曲がとても多いんですよ。個人練習もユニットの練習も相当して臨んだのだろうと窺え、評価もぐんとアップしました。
  印象にのこった曲を紹介しますね。個人の好みもあるけど、1部の「3つの小品」。2部の「いそぎあめ わたりあめ」。どっちも目頭が熱くなりそうなフレーズがてんこ盛りで一押しです。最後にきかせてくれた「こうもり 序曲」みたいな、弾むよう聴かせてくれた曲もよかったですよ。アンコールは「情熱大陸」。フルートでもしっくりきたので十分堪能できました。
  いつも思うのですが、いい余韻が残る演奏会に出逢えると本当にラッキーです。今日の演奏会って、自分たちの未来も託したくなるような演奏会みたいだったし。今後、社会人になって、プレーヤーを継続したり教育者の道にいくかもしれないけど、彼らにエールを送り続けたいと思います。
  中学生(だと思うけど)が、「次は私がそこに立ちたい」と食い入るようにステージを見ていたのにもジンときました。だから、あやかさん・げんたくん・みくさん・ももかさんにもリクエストがあります。
 ユニットでもソロでも構わない。次回は「凱旋」公演ですよ。

情報発信ボランティアライター 河島 三二