★イベントレポート 「東京交響楽団 弦楽四重奏団 0才からのコンサート」2022年2月12日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします。

*************************************************

 ここは、何処だろうか?
 子どもが沢山いる。ママに手を引かれヨチヨチ歩く小さな子どもたちが目に付く。可愛らしい!風景だ。
 高齢化が進んでいる日本ではないような、今日の逗子文化プラザなぎさホール。天使たちが舞い降りたような、「きらきら」した雰囲気。子どもと一緒のママやパパもハレの表情をしている。
 ホールは、客席も明るい照明のままで、公演が始まる。クラシック音楽のなかでも、特に好きなヴィヴァルディの『四季』。子どもにも好まれる曲として選んだのだろうか?
 演奏するのは、1946年創立の伝統ある東京交響楽団の中からピックアップされたメンバーで編成する東京交響楽団 弦楽四重奏団。
 ステージに、赤色をアクセントにした華やかな衣装の女性。「歌のおねえさん」こと加藤理子氏が登場。ミスマッチかなと思われたが、弦楽四重奏団をバックに童謡『雪』やディズニー映画の挿入歌『ありのままで』をきれいなハイトーンで歌いあげる。予想に反して楽しく心地よい。
 続けて、同氏がリードする「手あそびうた」で客席とステージが一体化して盛り上がる。『グー・チョキ・パー』『あたま・かた・ひざ・ポン』の曲にのり、同氏の動きに合わせて、子どもたちが手を動かし、ママもパパも一緒。本当に楽しそう。
 指揮者体験コーナーでは、本来は来場者が体験する予定だったが、新型コロナウィルス感染症の影響を配慮して加藤氏が代行。同氏いわく、ベートーヴェンの『運命』の誰でも知っている部分「ジャジャジャジャーン」の最初の「ジャ」の音の前は無音の1拍があるので、プロの指揮者でも難しいそうだ。
 ステージの背景に見慣れた、いや懐かしい映像が映る。絵本でおなじみのエリック・カール作『はらぺこあおむし』だ。
 最後は、ドヴォルザーク『弦楽四重奏曲12番「アメリカ」より第4楽章』の演奏だ。リラックスした子どもたちは、演奏中にも拍手などをして楽しそう。
アンコールは不朽の名作「となりのトトロ」の挿入歌『さんぽ』などで余韻を残しながら、気持ちをテンポアップさせてくれた。自粛生活でストレスがたまるなか、子どもはもちろん、ママが一番癒されたのではないだろうか!
 荷物をしまいながら、パンフレットに目をむけると、本日の出演者である東京交響楽団の第1ヴァイオリン奏者の土屋杏子氏は地元・逗子出身。3月6日にはさざなみホールでリサイタルを行うそうだ。今度は弦楽とピアノの音色に浸りに来たいものだ。

ボランティアライター 海原弘之

*************************************************

 連休の中日。寒さが緩み空も青い。建物の外まで入場を待つ列ができていた。大盛況だ。
 東京交響楽団 弦楽四重奏団(ヴァイオリン2名、ヴィオラ1名、チェロ1名)の演奏が始まると、客席のどこかから「イーイー」という声が聞こえてきた。音楽に反応した赤ちゃんが歌いだしたようだった。
 童謡、アニメソング、手あそびうたなどが、弦の音色と現役音大生のおねえさんの歌、司会で進んで行く。その歌声が良く通るので、マイクなしでも聴いてみたかった。四重奏は、主旋律がしっかり聞こえるような演奏だったと思う。
 四重奏は4人なので息を合わせやすいが、60~70人のオーケストラになると指揮者が必要だという話の流れで、指揮者体験コーナーへ。《L.v.ベートーヴェン/運命》を、二拍子の指揮でおねえさんが体験した。
 絵本『はらぺこあおむし』は“歌がたり”で、テキストにメロディーがついたものだった。エリック・カールの鮮やかな色彩がステージ奥の壁に大きく映し出されて、とても綺麗だった。ひと文字ひと文字がゆったり歌われるので、のんびりと絵を眺めていても、ページがめくられてしまうことがない。
 《弦楽四重奏曲第12番ヘ長調「アメリカ」より第4楽章》はA.ドヴォルザークがニューヨークナショナル音楽院の院長としてチェコから渡米していたころの作品。彼は機関車が好きだったそうで、曲に“しゅっしゅっぽっぽ”のリズムを取り入れているとのこと。そう言われて聴くと、そうとしか聞こえてこなかった。こんな豆知識も嬉しい。
 冬にちなんだ曲から、手あそびうたで少しアクティブになり、絵本であおむしが蝶に孵る。まるで季節が春に移っていくかのようだ。会場に若い命がいっぱいなので、よりいっそう春を感じた。最初と最後にクラシックが演奏されたのも、ホールでのコンサートらしくてよかった。
 赤ちゃん連れが多く、「0才からのコンサート」が広く親しまれていると感じた。休憩なしで1時間程度。客席も明るいまま。「泣いてしまって外に出ても大丈夫。」「親子室もあります。」そう言われてもまだ心配かもしれないが、実際に、泣いたり、外に一時避難したりする赤ちゃんや、歩き回って親御さんが中腰で追いかけるお子様も珍しくない。お父さんに抱え込まれながら、周りにつられて腕ごと拍手していた男の子が可愛らしかった。このコンサートならではのシーンだ。お子様が赤ちゃんのうちに、ぜひお運び頂きたいと思う。

ボランティアライター 深谷 香

*************************************************