★イベントレポート「クリスマス・ファミリー・イベント」2015年12月20日開催

レポート1220_公開版

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当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

去年の秋、ホールで赤と緑のとてもかわいいチラシを見つけた。遠目にもクリスマスを思わせたその公演は『Christmas☆Family☆Eventストリングラフィ☆アンサンブル☆コンサート』だった。“ストリングラフィ”とは一体…?
12月20日(日)、興味津々で会場に入ると、舞台の端と端に建てられた、大人の身長より高めのポールの間に何本もの糸がぴんと張られ紙コップが通されている。糸電話のようだ。それが舞台の手前から奥に向かって3セット用意されているほかに、床から天井に向かって張られた糸電話も14本ほどあって、なかなかArtな光景だった。
ストリングラフィ(Stringraphy=Strings+Graphic)は弦楽器の一種で、松脂が塗られた絹糸と160個の紙コップで作られ、公演会場にそのつど設置されるユニークな楽器だ。絹糸はポリエステルなどに比べて凹凸があってきれいな音が出るそうだ。設置された3セットはそれぞれソプラノ・アルト・ベース(例えるならヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)の音域をもち、紙コップと紙コップの間が短いほど高い音が、長いほど低い音が出る。演奏すればするほど振動によりきれいな音をだすように変化するので、10年以上同じ紙コップを使っているとのことだった。糸の振動と音の出る仕組みを確認して演奏が始まった。
 
◆11時開演『糸の森のクリスマス音楽会』
0歳から楽しめる45分間の公演。赤ちゃんから小学生ぐらいのお子様連れが多く、開演前のロビーで持参した飲み物やおにぎりを手にする姿がかわいかった (^^♪。
4人のパフォーマーが鈴を鳴らしながら登場。白い手袋をはめた両手で糸を擦ると♪アイネクライネナハトムジークが流れた。第一印象はハーモニカと弦の間のような音に思えたが、曲が進むにつれて弦らしく感じる。♪むすんでひらいてが演奏されるとたくさんの手が参加し、「音の絵本のプレゼント~ブレーメンの音楽隊~」は劇のようで、丁寧な言葉づかいが素敵だった。
ストリングラフィで表現された雄鶏の鳴き声はそっくり。おばけが出る様子の音はリアルすぎて泣き出すお子様もいたが、すぐに「だいじょうぶですよ~」と舞台の上から呼びかける。♪子犬のワルツ♪山の音楽家♪メリーさんの羊などのメドレーで絵本のコーナーが終わると、アナと雪の女王より♪Let it goが演奏され、ご一緒にとのお誘いに歌声がひろがった。
 
◆13時30分開演『森の記憶』
すこし大人向けの選曲による1時間ほどの公演。一曲目(♪アイネクライネナハトムジーク)の演奏が終わると、初めて見聞きする楽器への感想のような静かなどよめきが起きた。白とアイボリー(紙コップ色?)の衣装をまとった4人の動きは、忙しく糸を擦りながらも踊るように優雅である。楽譜は基本的にはドレミで表され、ト書きに【回る・広げる】などの動作が書かれているそうだ。奏法でパフォーマーの個性が出るのはピチカートらしい。このピチカートだが、ヴァイオリンのそれとは異なり、「ぱん!」と強く紙をはじくような“和”の響きだった。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
ストリングラフィは、作曲家で演奏者でもある水嶋一江さんが山形を訪れた際に、自然のサウンドを表現したい、森そのものを楽器にしたいと思い初めて考案した楽器だ。オリジナル曲♪森の記憶は、深い森の得体の知れない怖さや、小鳥のさえずりに感じる安心感、葉のすれ合う音、動物の気配など、私の中の鬱蒼とした森の記憶を甦らせ心に残った。
 
どちらの公演も最後はクリスマスメドレーが演奏され、自然に手拍子と歌声が溶け込む。機会があれば時間芸術と空間芸術が融合したようなステージを体感してみては。
 
情報発信ボランティア  深谷 香