★イベントレポート「天満敦子 トーク&コンサート」2017年3月12日(日)開催

レポート_トーク&コンサート レポート_トーク&コンサート②

 

 

 

 

 

 

 

当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

 

「感動したい!」繰り返される日常に流されながら、私は時々そう思う。世界的なヴァイオリニスト、天満敦子氏の演奏に期待し満員となった会場。そこで披露された、様々なメロディーやリズム、強弱に彩られたヴァイオリンの音色。それは時に優しく、時に切なく、時に哀しい。そう、まるで我々の人生のよう。天満氏の代名詞といわれる『望郷のバラード』をはじめ、瞑想曲や祈りをテーマにした静かな曲が多かったのは、天満さんが6年前の東日本大震災の被災各地での公演を今も続けられており、3月12日開催のこの公演に、被災された方たちへの祈りの思いをこめられたから…だったのかもしれない。『花は咲く』の演奏に望郷の思いを感じ、会場全体が感極まった後、最後の曲『雅俗二譚』での力強い演奏にのせての、未来への希望や、「力強く生きていこう」という天満氏からのメッセージ(と私は受け取った)でコンサートは締めくくられ、場内は割れんばかりの拍手に包まれた。人の人生、そしてそこにある人の心は音楽のようであり、音楽は人の心が奏でる。その音楽が人の心を感動させる。そんな想いを感じさせてくれた、素晴らしいコンサートだった。「感動したい!」もしあなたもそう思うことがあるなら、是非次回のこのコンサートに足を運んで頂きたい。

ボランティアライター 浅野修弘

 

客席のライトが暗くなり、ステージが薄明るくなると、世界的ヴァイオリニストの天満敦子氏が30年前に“結婚”した282歳になるストラディヴァリウスと共に現れた。昨日は、6年前に東北大震災の起こった3.11。彼女は東北の塩釜市で慰霊コンサートをしてきたそうだ。今日は、バッハの『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004よりアルマンド』で始まった。演奏が続く中でステージの照明が一段と暗くなった。天満敦子氏の姿が黒く浮かび上がった。ヴァイオリンの澄んだ美しい音色にのめり込むように集中して気持ちがいい。休憩時間の前には、クラッシックでは異例の5万枚を超える大ヒットアルバムとなった天満敦子氏の代名詞ともいわれる『望郷のバラード』が演奏された。後半は、日本の曲目の演奏だ。熊本県民謡『五木の子守唄』に始まり、菅野よう子の東北大震災復興ソング『花は咲く』が奏でられる。震災後は、母親の故郷である福島県を中心に被災各地で公演を続けてきたそうだ。終演してロビーにでると、みんな口々に「素敵だった!」「凄い迫力だけど、押しつけがましくなくて、心にしみたわ」などと名残おしそうな声が聞こえた。彼女はとくに言わなかったが、聴かせてくれた音色には、鎮魂や未来へ向かう力をこめたメッセージがあったのだろう。

ボランティアライター 海原弘之

 

ソリストが楽器を片手に登場する場面はいつも私をわくわくさせる。天満敦子氏は、シンプルな黒の衣装にやわらかな表情で舞台に現れた。まず、バッハの『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ』。哀愁を帯びた曲とストラディバリウスの音色は、それだけで味わうのがいい。最小ユニットが最高の余韻を作ってくれる。2曲目からピアノが加わった。クライスラーの『ロンディーノ』は、明るく軽やかで春にぴったり。『トロイメライ』、『タイスの瞑想曲』、『アヴェマリア』と続き、会場の雰囲気も華やいだ。1部はこんな風にクラシック曲で構成されていた。2部は『五木の子守歌』や『落葉松』、東北復興支援の『花は咲く』など日本の曲が中心。郷愁を誘う切ない旋律に涙を拭う人もいた。今日のコンサートは、被災地の人々に思いをはせる時間でもあった。前日に塩釜市の慰霊祭で演奏してきたという天満氏は、まだ重い気持ちを引きずっていると打ち明けた。とにかくあの震災を忘れないこと。睨みつけて生きていくこと。アンコールのモンティ『チャールダッシュ』には彼女のそんな決意と一途さがあふれていた。 

ボランティアライター 羽田桂子