★イベントレポート「逗子落語会 林家たい平・立川談笑 二人会」2019年2月2日(土)開催

不破様 蓬田様

当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

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 立春の頃、恒例のお楽しみの逗子落語会、まずは前座の柳亭市坊が登場。朗々と大きな声で、出し物は「転失気(てんしき)」。知ったかぶりの和尚が医者に「てんしき」はありますか?と問われ、小坊主の珍念を利用しこっそり意味を探ろうと画策する。医者が珍念に「それはつまりおならのことじゃ」と教えるくだりになると、会場のどこかからひときわ嬉しそうな子供の笑い声があがった。下の話はいつでもみんなが楽しい。

 続いて真打立川談笑。東京五輪を枕に、建設費が三兆円、ゼネコンが50年に一度の大収穫祭で大喜び、悪いのは誰だ?と笑わせる。真打は時事ネタもチクリとした皮肉を交えて小気味よい。本題は与太郎と骨董屋に来る客たちのやり取りが滑稽な「金明竹」。原典では関西訛りが強い客の言っていることが聞き取れず、何度も繰り返させる話のようだが、本日は津軽弁?に聞こえる雄弁を駆使、大いに笑わせてくれた。

 仲入り後は幇間芸の悠玄亭玉八。初めて見る本格的な幇間芸だったが、これが凄かった。男芸者ともよばれる幇間は、お座敷に来るあらゆるタイプのお客を楽しませるために歌舞伎役者の芝居の物まねから政治家の声色、落語家顔負けの小話に一人芝居まで、あらゆる芸をこなす。三味線を弾かせれば、竿を立ててブライアン・メイも顔負けのハードなバチさばき、かっぽれを踊り、老女と娘を身のこなし一つで演じ分ける。今上天皇の声色で、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが今、極めて大切なことだと思っています」とさりげなく陛下の平成27年新年の感想をやるあたりが又、心憎いセンスの良さ。実に実に、日本の伝統芸の素晴らしさを味わわせてくれた。多くの子供たちにもぜひ見てほしいと思った。

 とりを取るのは2年ぶりの林家たい平。歌丸さんを偲んで、笑点メンバーの集団人間ドックのこと、善光寺でやった二人落語会の帰り路の話など、歌さんがまだ一緒にいるかのような暖かい笑いを呼び起こしてくれた。演目は「禁酒番屋」。先回は古典落語をオーソドックスに演ずる力量に大いに感心したが、今年は見事な酔っ払いぶりに加えて、「今」の要素もアレンジしたお茶目なたい平落語。最後には逗子の人々の健勝を祈って、高座の上で一人打ち上げ花火を演じてくれた。日本の話芸を大いに楽しんで星空を見上げた帰り道、言葉や対話が余りにないがしろにされている今、落語に学んでほしい大人が多すぎるよなあ、とため息が出たのだった。

情報発信ボランティアライター 不破理江

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 子供はどうも下ネタに笑いのツボがある。始まりは柳亭市坊さんの通りのいい声で「転失気」。医者の言ったテンシキという言葉の意味がわからず知ったかぶりをする旦那の話だ。医者がそれはおならのことだと言った途端、可愛らしく笑いだした子供の声。落語に限らず、芸能は客も一緒に作るもの。スイッチが入ったように会場の熱が更に上がってくる。

 続いては立川談笑師匠の「金明竹」。客に伝える口実を与太郎に指図するが検討違いに答えて怒られてしまう。次にやってきたのが上方出身らしい男。掴めそうでつかめない上方言葉の言伝を頼まれる。結局内容は最後までわからないので、家に帰って調べたほど。わからなすぎて面白くなってしまう与太郎のかわりに聞いたおばさんもわからなすぎて泣き出してしまうのが可笑しくて可愛い。店の主人が怒っているのにウィットに飛んでいておおらかで優しく感じる。

 お仲入りのあとは幇間芸、悠玄亭玉八師匠。初めて聞いた「ホウカンゲイ」ですが、男芸者すなわち太鼓持ちの芸なんだそう。ひょうひょうと繰り出される数々のネタは勉強不足で特に役者のものまねはわからないものも多かったが、階段を降りる若い女性の背中の仕草の真似がまあ、色気のあること。ふすま芸の一人芝居はタネは分かっているものの、なんだか引き込まれてしまってひとりとは思えない。自分の生活文化では決して見ることがないものでありがたい。機会があったらお座敷で粋に拝見したい、そんな身分になってみたい。

 そして林家たい平師匠へ。ファンとして笑点ネタはほんとに嬉しくて、楽しみ。今回はどうしてたい平師匠が笑点に出演することになったかのエピソードも聞けた。演目「禁酒番屋」。禁酒の令ができて、確認だと理由をつけて、隠して運ぼうとしたお酒を飲む番屋の侍。お酒を飲む仕草がほんとに美味しそうですぐにたい平ワールドにどっぷりずぶずぶと入りこむ。最後に丁稚が酒を飲まれてしまった敵討ちを請負うのだが、それは…いやー、たとえ話でもアレは嫌なものだ。その嫌そうな感じが存分に伝わるその表情がリアル。毎回楽しみな逗子落語会。今回も素晴らしい内容だった!

情報発信ボランティアライター 蓬田ひろみ